free 【Art Fair in the World】―The Armory Show 2015(速報)
The Armory Show 2015―アーモリーショーの現在
2015年のAromry Showが始まった。これをプレヴューで見て、気づいたことがあったので書き留めておきたい。
まず、プレヴューを見て、人出は多いように感じたが、落ち着いたフェアになっていた。フェアが全体的に整理されて、すっきりしていたのだ。その理由の一つが、いわゆるコンテンポラリーマスターの作品が少ない。彼らの一部は、ジュリアン・オピーやマーク・クインまでを含めて、Armory Show Modern(フェアのモダンアート部門)に移っている。また、コンテンポラリー部門では、中堅どころのアーティストが新作を出してきたこともあって、フェアに清新な空気が吹き込まれた。
ところで、気づいたことというのは、参加ギャラリーによって浮き沈みがあるのではないかということである。浮き沈みとは、うまくいっている(成功している)ギャラリーとうまくいっていない(失敗というより成功していない)ギャラリーがあるように見えたのだ。ただし、この成否の判断は私の独断なので、ギャラリーの売り上げの実際の多寡とは別の話である。だが、アートフェアだけでなく現代アートシーンを長年観察してきた人間にとっては、ギャラリーの浮き沈みは、そこに展示される作品を見れば、大方予想がつく。
というわけで、私の妄言を信じてもらうことにして、今年のアートフェアArmory Showの診断に付き合っていただきたい。
まず、成功していないのではと思われるギャラリーを挙げてみよう。それは、世界の中堅のギャラリーである。少し前までは勢いがあったのだが、ここに来て停滞しているように見えるのだ。それは、アートをめぐる経済事情が強く影響しているのではないか。現在、先進国が基本的に不況にもかかわらず、政府の景気浮揚策によって世界的に金が余っている。その余剰資金が、アートマーケットに大量に流入していることは周知の事実である。これが、アート作品の高騰を招いていて、それを扱えるギャラリーの数が限られる。アートマーケットに格差が出てきてしまっているのだ。そのため、資金力のない弱小ギャラリーはつぶれ、中堅は行き詰まり状態に陥る。中堅には新しい駒を動かせる余裕がないので、アートフェアに出展した場合、手持ちの駒で勝負せざるを得ず、商品となる作品に代わり映えがないという停滞感が生まれるのである。それでも、ギャラリー・アーティストが順調に評価を上げていけば問題は解決されるのだが、そうなったとしてもアーティストはよりよい条件の大手のギャラリーに移籍してしまう。というわけで、全体的に中堅のギャラリーに活気がなくなるという具合(いわゆるマンネリ化)。そうなることで、世界のギャラリーの相関図のなかで地盤沈下する。それをうまく切り抜けるには、専門分野に特化することで、他に追随を許さないギャラリーになることである。ニューヨークで言えば、多文化主義の潮流に乗ったShainmanとLemann Maupin。
さて、あくまで私見だが、成功していないように見えるギャラリーの名前を上げれば、Boesky、Eleven Rivington、Pierogi、P.P.O.W、Metro Pictures、Kreps、Blum、Regen、Kukje/Kim、それにパリの一部のギャラリーである。名前を敢えて挙げたのは、もし読者がニューヨークやパリに行く機会があれば、私の言うことが正しいか、自分の眼で確かめてもらいたいからである。そして、私の見立てが違うと思うなら、そうと言っていただきたい。ちなみに、上掲のギャラリーに属するアーティストすべてが低迷しているわけではないので、悪しからず。
さて、次にうまくいっているギャラリーを挙げよう。
大手が来るのは、以上の説明で予想がつくだろう。ギャラリー名と展示作を見せよう。
Zwirner
Zwirnerは、さすがと思わせる展示で、王者の風格と言えばよいか。Armory Showは、GagosianやHauser & Wirthがフェアに出展していないため、大手ではZwirnerの一人勝ちの様相なので、中堅以下の成功しているギャラリーの展示作を紹介したい。
Kilchmann
スイスのチューリッヒにあるギャラリー
Bleeder
ギリシャのアテネにあるギャラリー
Rein
パリとブリュッセルにあるギャラリー
Hales
ロンドンにあるギャラリー
そんななか出展アーティストで成功しているギャラリーがある。
それが、Irma Blankの個展を行ったAlison Jaques(ロンドン)である。
しかし、2015年のArmory Showでもっとも刺激的だったのは、Armory Presentsという若いギャラリーが参加する個展または二人展形式のコーナーだったのではないか。それらのギャラリーをすべて紹介しよう。そこに展示された作品の一番の長所は、それらが真似であるとか、構成がどうのとか考えなくてもよいことである。というのも、これらの作品は、元々シミュラークルであって真似とは無関係だからであり、また全体もなければ部分もないからである。
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2015.03.06 | コメント(0) | アートシーン