[連載] Contemporary Art Scene in the World(13)--ParisとLondon、二都物語―現代アートのパララックス(2)

ParisとLondon、二都物語―現代アートのパララックス(2)


[London]
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4.ロンドンの物質=イメージとアートの歴史
パリの物質=イメージに相当する作品が、ロンドンのギャラリーの展示作品にもある。それは、Herald Street GalleryのIda Ekblad(写真)。

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プリミティヴな絵画の部分のマティエールの素朴さと繊細さがリアルでイリュージョンを掻き立てる。
フランスの人類以前や以後の実在を思考する思弁的実在論は、人類の作るアートの歴史を無視・忘却するが、むしろロンドンのほうが歴史を参照しているのではないか。たとえば、パリで大展覧会を開催していたドランの絵画が、Tate Britenの展覧会に飾られていた(写真、Tateは作品の写真を撮れなかったので、ポンピドゥ・センターのドラン展に出品されたロンドン滞在時の絵画から。だが、Tateのほうが数段良かった)。

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Ekbladの絵画は、フォーヴィスムの原色に近い色彩を引用しながら、それをマティエールでずらすことで、フォーヴィスム絵画のシミュラークルになっている。勿論、フランスが美術史を参照枠にしていないわけではない。しかし、イギリスは謙虚に美術史を学ぶ姿勢があるのに対して、本家本元は過去の栄光に甘えて、その上に胡坐をかいているように見えなくもない。


5.ロンドンの物質=イメージの作り方―純粋シミュラークルに向けて(変則的アートフェアCondoのケース)
ロンドンには、グローバルマーケットの最先端(歴史のコンテクストを踏まえなければ、歴史の最先端を特定できない)を目指す現代アートの最前線の若手ギャラリーが15軒くらいある(Condo参加ギャラリーで、10軒のニューヨークより多い)。それら(+有名ギャラリーのColes、Paley)が集まってCondoと名付けられたグループ展(写真は、そのポスター。毎年1~2月に開催される、フェアと称していないが実質的にフェア。始まったばかりで、今年3回目)を行っている。
http://www.condocomplex.org
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ギャラリーで開かれるこのグループ展には、ホストのギャラリーと招待された海外のギャラリーのアーティストの作品がともに展示される。その疑似フェアは、ホスト・ギャラリーが考えるマーケットにおける最先端のアートを紹介していると言ってよい。
そのCondoに参加したギャラリーを地区ごとにまとめて提示しよう。まず、ホストのギャラリーの作品を、hostingの次にゲストのギャラリーの作品を見せる。ホスト、ゲストのギャラリーが不明の作品については、一緒に画像を並べることにする。

[South、West]
The Sunday Painter / Arcadia Missa
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Leo Fitzmauris

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Cheyenne Julien

hosting Dawid Radziszewski Warsaw
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Alicja Kowalska

Stereo Warsaw
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Roman Stanczak

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Gizela Mickiewicz


Rob Tufnell
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hosting Croy Nielsen Vienna
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Ruth Ewan

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Elke Silvia Krystufek

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Marlie Mur


greengrassi / Corvi-Mora
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Tatsuo Ikeda

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Imran Qureshi
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John Lindel

hosting Lomex New York
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Kye Christensen-Knowles

JTT New York
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Sable E Smith

Proyectos Ultravioleta Guatemala City
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Naufus Ramires-Figueroa


Konig London
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Jose Davila

hosting Galeria Jaqueline Martins São Paulo
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Lydia Okumura

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Jeppe Hein


[Center、East]
Pilar Corrias
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Gerasimos Floratos & Christina Quarles,

hosting Societe Berlin
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Trisha Gaba


Southard Reid
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hosting Bureau New York and Park View Los Angeles
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Erica Baum
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Joanna Piotrowska
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Edward Thompson
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Libby Rothfeld
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Juan Antonio Olivares
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Mark A Rodriguz
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Victoria Colmegna
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Vivienne Griffin


Rodeo
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Ian Law

hosting Andrew Kreps Gallery New York
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Robert Overby


Project Native Informant
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Ned Vena

hosting MadeIN Gallery Shanghai

Shen Xin

KOW Berlin
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Tobias Zielony


Mother’s tankstation
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hosting Edouard Malingue Gallery Shanghai / Hong Kong
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Union Pacific
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Caroline Mesquita
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Ulala Imai
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Koak

hosting Misako & Rosen Tokyo
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Maya Hewwitt

Chert Ludde Berlin
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Zola Mann

Gregor Staiger Zurich
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E’wao Kagoshima


Emalin
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Alvaro Barrington

hosting Weiss Falk Basel
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David Weiss


Maureen Paley
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hosting Dependance Brussels
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Michaela Eichwald

JosegarcÍa, MX Mexico City
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Eduardo Sarabia


Carlos/Ishikawa
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hosting Queer Thoughts New York and Schiefe Zahne Berlin
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Modern Art
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David Noonan

hosting 1301PE Los Angeles
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Fiona Conner


The Approach
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Bill Lynch

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Gabriel Lima
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Mauro Cerqueira
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Silvestre Pestana
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Dan Rees 578
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Carla Filipe
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Daniel Steegmann Mangrane


6.結論
Condoの出展作品が、私の言う純粋シミュラークル──モティーフ(指示対象)とマティエール(素材の物質性)のない非再現的イメージ──とどう関係するかというと、シミュラークルの純化が、ここで紹介した作品を通して目標とされているということである。パリからロンドンに移動する前後に見せたギャラリーの展示作が、マティエールの部分のイメージ化だったのに対して、Condoの作品は全体をイメージ化しようとしているのではないか? あくまでも、非再現的イメージ、言い換えれば作品自体をイメージにするということである。
そして、この傾向──モダンアートは新しいものを提示しショックを与えることで一時的に非現実のイメージ(幻想)のように思われるが、繰り返されて慣れれば現実の物質に戻る(反復によるフェティッシュ化)。そうではなく、そのプロセスを構造化して表現に組み込むことで、つねに新しくあり続ける。その新しさはモダンアートのそれではない。なぜなら、反復してもフェティッシュ化せず新しくあるものは、オリジナルではないからである。それがシミュラークルである。その極限に指示対象のまったくない純粋シミュラークルがある──は、Condoに限らず、最先端を目指す世界の若手ギャラリー(ロンドン、ニューヨーク、パリ以外では、ベルリンに2、3軒)に共通する特徴ではないか?
では以上の作品と、大手・有名ギャラリーに展示される作品との違いは何か?
それらの有力ギャラリーで掛けられるエスタブリッシュされた作品は、フェティッシュであったり、スペクタクル化されている。すると、作品自体は派手で目立つ(その結果、高い値段で売れる)が、前述のように作品全体や部分のマティエールがイメージになることはない。その例を、残念ながらCondoに参加した大手ギャラリーで示そう。Condoといえどもマーケットの悪弊と無縁ではないのである。
Sadie Coles HQ
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Kati Heck

hosting Koppe Astner Glasgow
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Josh Faught
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Kris Lemsalu

Madragoa Lisbon
http://www.sadiecoles.com/other-exhibitions/condo-2018


またCondoには、それから逸脱する興味深い方向の作品もある。
Hollybush gardens
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Andrea Buttner

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Sven Augustijnen(dOKUMENTA 13に参加)
Condoには珍しく、社会や政治の右傾化を批判する社会、政治的表現だが、現実に接近するこの表現が、フィクションより強く感じられる。
では、パリとロンドンの街頭での政治的行動は、どのように感じられるだろうか。
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パリの北駅近くの広場で行われた集会が終わった後の風景

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パリのPalais de Tokyo近くで行われた集会の模様

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ロンドンのセント・パンクラス駅前の集会

現実を変革したいのなら、再現的イメージではなく、非再現的イメージを介して現実世界へと接近しなければならないのか? 再現的イメージを利用して、現実の矛盾や悲惨を告発すればよいではないか。そっちのほうが、手っ取り早く有効ではないか?
だが、再現は既存の世界を前提するので、観賞者はそのイメージを受動的かつ固定的に捉える。そうではなく、イメージのなかで能動的に活動するには、対象の現実がイメージであること、そしてその柔らかな現実が固定されておらず可変であることが最重要のポイントである。
したがって、ドキュメンタリーのように現実をダイレクトに主題とする表現であれば、現実から強度を受け取ることはできるが、その力はそれほど強くない。力をより強力に決定的にするには、オーソドックスなドキュメンタリーの再現ではなく、非再現的イメージによる観賞者を能動的にする現実への接近方法が不可欠である。現実が非再現的つまり現実自体がイメージとなることで、現実世界への働きかける力を観賞者が十全に獲得するのだ。そこで自らイメージとなった観賞者(主体と対象がイメージになるとは、主客二元論的世界の独立した主体と対象の切り離された在り方とは異なるという意味で、事物的存在ではなくイメージに思われるのかもしれない。いずれにせよ、イメージとなった対象や人間は相互に浸透=共感することが常態になる)は、受動的な体験ではなく積極的に参加し行動する者になるのだ。

テーマ:art・芸術・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術

2018.02.27 | コメント(0) | アートシーン

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